ぱらぷる帖 |
なんでも、この作品を読んだとある女性編集者は、本当に角田さんが妊娠されたと思って、お祝いを贈ったそうな。それぐらい、リアルな一冊。
角田光代の作品は、Yomyom連載(単行本「くまちゃん」収録)のも熱心に読んでいたし、何冊か文庫も持っている。でもなんとなくこの作者の面白さを表現できずにいた、というのも正直なところ。 でも今回この「予定日はジミー・ペイジ」と「八日目の蝉」を読了して、唐突に腑に落ちた。この人の作品は何を描こうと、どこまで行こうと『実用』なのだと。例えば川上弘美が「ちょっと欲しいな」と思わせる、でも実用には不向きな雑貨のような作品を書くとすれば、一方の角田光代は、定番のシャツのような、そういう話を淡々と紡ぎ続けているのではなかろうかと。いつだったかのku:nelで、角田光代は朝7時過ぎ(うろ覚え)からひたすら書いて、毎日17時には終了させるらしい、と記事に書かれていた。その職人のような姿勢にも通ずるような、この徹底した『実用』作品。重要なのは、「シャツ」なんだけど流行遅れにならないように襟の形や身頃にもその都度きちんと気を配られているっていうところ。 ・ごくごくリアルな日常の、ちいさいエピソードを拾い上げる丁寧さ ・全体の流れの中で貫かれている客観的視点 ・そして「友達の友達の話」ぐらいの距離感 平坦な文章で書かれているので、ささーっと読むと取りこぼしがちかもしれないが、この3点において今、彼女の右に出るものは他にいないんじゃないかとさえ思います。 今回の「予定日はジミー・ペイジ」では、エピソードがちいさければちいさいほど「ああーわかる」と膝を打つ描写でした。(芥子たっぷりの「当たり」サンドイッチとか)最近の角田光代は、観察眼もいや増しに増しているなぁー。日記形式をとってあるのですが、とにかく読み応えがありました。あと何度でも読みたくなるかんじでもあった。実際、早くも2回目読んでます。
by parapluplu
| 2011-06-22 04:15
| 読ム
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